水道水の安全性は高い日本ですが、より安心して水を飲むために浄水器を検討する家庭が増えています。しかし、どんな物質がどの程度除去できるのか、フィルターの種類によって性能がどう変わるのかを正しく理解している人は多くありません。本記事では、浄水器の除去性能とフィルター選びのポイントを詳しく解説します。
浄水器で除去できる物質とは?
浄水器が除去できる物質は、家庭用品品質表示法で定められた13項目と、浄水器協会が定めた2項目の合計15項目が基準となっています。法定13項目には、遊離残留塩素、濁り、総トリハロメタン、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、溶解性鉛、農薬のCAT、2-MIB(カビ臭)、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタンが含まれます。これらの物質は、水道水の味や臭い、健康への影響を考慮して選定されました。特に遊離残留塩素は、水道水特有のカルキ臭の原因となる物質で、ほとんどの浄水器で80%以上の除去率を実現しています。総トリハロメタンは、塩素と有機物が反応して生成される物質で、発がん性が指摘されているため、多くの消費者が気にする項目となっています。
浄水器協会が追加で定めた2項目は、鉄(微粒子状)とアルミニウム(中性)です。これらも、水の味や見た目に影響を与える物質として重要視されています。ただし、すべての浄水器がこの15項目すべてを除去できるわけではありません。
製品によって除去できる物質の種類や除去率は異なるため、購入前に必ず表示を確認することが大切です。浄水器を選ぶ際は、自宅の水道水の状態や、特に気になる物質を把握した上で、それらに対応した製品を選択することが重要となります。
浄水能力はフィルターでどう変わる?
浄水器の性能を決定づける最も重要な要素がフィルターの種類です。活性炭フィルターは最も一般的なろ材で、塩素やカビ臭、有機物の除去に優れた効果を発揮します。多孔質構造により、1グラムあたり1,000~2,000平方メートルもの表面積を持ち、化学物質を効率的に吸着します。中空糸膜フィルターは、0.1~0.01マイクロメートルの微細な孔を持つ繊維状のろ材で、細菌や濁りの除去に特化しているのが特徴です。この2つを組み合わせた複合型フィルターは、現在の主流となっており、化学物質と微生物の両方に対応できる万能型として人気があります。逆浸透膜(RO膜)フィルターは、0.0001マイクロメートルという極めて小さな孔径を持ち、ほぼすべての不純物を除去できる最高レベルの浄水能力を誇ります。
ただし、水圧が必要かつ浄水に時間がかかるという特徴があり、価格も10万円以上と高額になることが一般的です。セラミックフィルターは、耐久性に優れ、洗浄して繰り返し使用できる経済的なろ材として注目されています。イオン交換樹脂は、水中の金属イオンを除去する特殊なろ材で、硬度成分や重金属の除去に効果的です。
各フィルターの寿命は、活性炭で2~6か月、中空糸膜で1年程度、逆浸透膜で2~3年が目安となります。使用量や原水の水質によって交換時期は変動するため、メーカーの推奨期間を守ることが重要です。フィルター選びでは、除去したい物質、使用頻度、ランニングコスト、設置スペースなどを総合的に検討し、ライフスタイルに合った製品を選択することが満足度の高い浄水器選びにつながります。
浄水器の正しい使い方と交換時期のポイント
浄水器の性能を最大限に発揮させるためには、正しい使用方法とメンテナンスが不可欠です。まず朝一番の使用時には、約10秒間の捨て水を行うことが推奨されています。これは、夜間に浄水器内に滞留した水を排出し、新鮮な浄水を得るための重要な習慣となります。浄水の温度管理も重要です。35度以上のお湯を通すとフィルターが劣化し、吸着した物質が再溶出する可能性があるため、必ず水またはぬるま湯での使用を心がけます。フィルター交換時期の判断基準は3つあり、第一に使用期間、第二に通水量、第三に水の味や臭いの変化です。多くの製品には交換時期を知らせるカウンターやインジケーターが搭載されており、これらの表示に従うことが基本となります。
交換を怠ると、フィルターに蓄積された汚れや細菌が繁殖し、かえって水質を悪化させる原因となるため注意が必要です。蛇口直結型の場合は、定期的に本体とフィルターの接続部分を清掃し、カビや水垢の付着を防ぐことも大切です。
据え置き型やビルトイン型では、年に1回程度の専門業者による点検を受けることで、長期間安定した性能を維持できます。浄水器の保管についても配慮が必要で、長期間使用しない場合はフィルターを取り外し、本体を乾燥させて保管します。
また、災害時の備えとして、カートリッジの予備を1個程度ストックしておくと、断水後の水質悪化時にも対応できて安心です。正しい使用方法とメンテナンスを継続することで、浄水器は10年以上使用できる耐久消費財となります。