地震や豪雨などの災害で断水が発生すると、水の確保が大きな課題となります。プールの水は飲用には向いていませんが、適切な処理を実施することで貴重な水源として活用できます。この記事では、プールの水が災害時にどのように役立つのか、その仕組みや実際の取り組み事例をわかりやすく解説します。
災害時にプールの水は使える?
大規模な地震や豪雨などの災害が発生すると、水道が止まり、トイレの使用や生活用水の確保が困難になることがあります。そんなとき、学校などに設置されているプールの水が役に立つのをご存じでしょうか。プールは、水泳の授業や水遊びを楽しむ場であると同時に、非常時には生活を支える「水源」としての役割も担っています。トイレの水として活用
学校のプールは、子どもたちが泳ぐ技術や水への適切な対応力を身に付ける場として設置されています。また、その水は、消火用水や生活用水としての利用が想定されており、トイレの水としても役割を果たします。災害時には停電や下水管の破損によってトイレの水が使えなくなるケースが多く、衛生状態の悪化から感染症のリスクが高まります。そのため、トイレ用水の確保は欠かせない課題です。トイレの水9万回以上を確保できる
では、プールの水がどれほど役に立つのか、具体的な数値で見てみましょう。一般的な学校のプールは縦25メートル、横12.5メートル、水深は0.8〜1.4メートルほどですが、水深を1.2メートルと仮定した場合、その水量はおよそ37万5,000リットルです。現在普及している節水型トイレでは1回の大洗浄に約4リットル、小洗浄では約3.5リットルの水を使用します。これを基準にすると、プールの水で約9万3,700回ものトイレ使用が可能となる計算です。一方で、1990年代以前に設置された従来型トイレの場合、大洗浄で約13リットル、小洗浄で約8リットル必要です。
それでも、プール1杯で約2万8,800回分のトイレ用水が確保できることになります。つまり、学校のプールは、避難所として多くの人が集まる場合でも、数日から数週間分のトイレ用水を賄える水源となり得ます。
災害用浄水器の使用で飲用水にもなる
プールの水は次亜塩素酸などの薬剤で消毒されているため、そのまま飲用に使うことはできません。よって生活用水として、トイレの洗浄や掃除、消火活動に利用するのが基本です。飲料水として使うには、専用の災害用浄水器などでろ過・殺菌処理する必要があります。実際、多くの自治体では避難所に携帯型浄水器や簡易濾過装置を備蓄し、プールや河川の水を飲み水に変えられる体制づくりを進めています。プールを緊急飲料水に変える最新の取り組みと実例
災害が発生すると、もっとも深刻な問題のひとつが飲料水の確保です。水道施設が損傷したり、停電によって浄水場が停止したりすれば、生活用水だけでなく、命を守るための飲み水すら手に入らなくなる可能性があります。こうした事態に備え、学校のプールを飲料水に変える仕組みを整える自治体が増えています。和歌山県田辺市の取り組みを見てみましょう。津波も想定し導入
田辺市は、災害時に水道が止まった際の代替水源として、学校プールの水を飲料水に変換する仕組みづくりに着手しました。プールを緊急水源に位置づけることが検討されたのは、津波によって浄水場が被災する可能性も考慮したためです。従来は沿岸部のみを想定していましたが、東日本大震災の教訓から、内陸部の浄水場も無傷ではいられないと想定されました。その中で、身近にある学校プールは、大量の水を確保できる現実的な資源と考えたのです。
8基の浄水装置を導入して貯水タンクも設置
導入したのは、プールの水を安全な飲み水へと浄化する高性能な浄水装置です。その有効性が認められ、避難所となる小中学校や県立高校に設置が進められました。8基の浄水装置のほか、飲料水を貯めるための5トン型タンクや0.5トンタンクも複数用意され、給水車による搬送体制も整えられています。プール水を飲料化する処理手順と運用ポイント
災害で断水が発生した際、身近な水源として注目されるのが学校や公共施設のプールです。ただし、そのままでは飲料水として利用できず、適切な処理と運用体制が欠かせません。そこで活用されているのが災害用浄水器です。強力かつ長持ちするろ過機能
まずホースでプールの水を取り込み、活性炭ユニットで臭いや色、残留塩素などの成分を除去します。その後、膜ろ過ユニットによって細菌や微細な不純物を取り除きます。その性能は1時間あたり約1.5トンの水を浄化できる高性能なものです。AMST認定のMF膜による本格的なろ過機能で、0.1マイクロメートル以上のクリプトスポリジウムや一般細菌、微粒子などを効率的に除去します。1日あたり50立方メートルの処理能力を備えており、地域単位での飲料水確保にも十分対応できます。
また、空気を送り込むエアスクラビングによって膜は定期的に洗浄されるので、長期にわたり透水性を維持可能です。ろ過後の水は残留塩素の濃度管理により、衛生状態が保たれたまま飲用や生活用水として利用できます。
オプションでカスタマイズも可能
水質に合わせたカスタマイズも可能です。例えば和歌山県田辺市では、学校プールの水を水源とする際に、有機物や残留塩素など、MF膜だけでは除去できない物質の存在が懸念されました。そこで事前に水質試験を行ったうえで、活性炭処理装置を前処理として追加し、本体仕様もそれに応じて調整しています。このように、地域の水質や利用目的に応じた柔軟な対応ができる点も、災害用浄水器の強みです。低コストでの運用が可能
運用コストが比較的低く抑えられるのも魅力です。小規模集落の浄水施設としても十分な機能を持ち、濁度の急上昇やクリプトスポリジウム対策など、老朽化した施設が抱える課題の解決にも役立ちます。自動運転や遠隔警報システムを組み合わせれば、山間部や離島といった遠隔地でも安定した水道サービスを継続できます。万一の故障や事故に備えて予備装置を待機させる運用体制を整えている業者もあり、緊急時でも迅速な対応が可能です。